脳の病気・症状
Brain disease
脳ドックの異常発見率はどれくらい?再検査の内容と見つかる病気を解説

脳ドックでは、一定の割合で何らかの異常所見が見つかるとされています。これまでの研究では、脳ドックを受けた人の約15%前後に異常が認められるという結果が報告されています。
一方で、すぐに精密検査や治療が必要になるケースはそれほど多くありません。多くは経過観察や生活習慣の見直しで対応できる軽度の所見です。
本記事では、脳ドックの異常発見率の具体的なデータを詳しく解説します。脳ドックで見つかる病気の種類や再検査・治療の流れもまとめているので、脳ドックを検討している方はぜひ参考にしてください。
脳ドックで異常が見つかる確率

脳ドックは健康な人に対して行われる検査であるため、重篤な病気が見つかる確率は高くありません。健康な成人を対象に脳MRI検査を行った研究では、以下のデータが報告されています。
- 何らかの異常所見:15.6%
- 精密検査が必要な異常:1.3%
- 手術が必要な異常:0.27%
このデータから、約6〜7人に1人の割合で何らかの異常が見つかったことがわかります。医療機関や検査内容によって発見率は前後するため、数値はあくまで目安として捉えることが大切です。
ここでいう「異常所見」には、将来的なリスク因子や加齢による変化なども含まれます。何らかの異常を指摘されても、すぐに治療が必要となるケースはそれほど多くありません。
脳ドックで見つかる病気

脳ドックは予防目的で受ける検査のため、自覚症状がない段階で病気が見つかることが多い傾向があります。ここからは、脳ドックで見つかる代表的な病気を解説します。
脳出血
脳出血は、脳の血管が破れて出血することで発症する病気です。主な原因は高血圧や動脈硬化で、突然発症して重篤な状態に至ることもあります。
脳ドックでは、過去に起こった出血の痕跡やリスクとなる所見が確認されることがあり、将来的な再発リスクの評価や生活習慣の見直しにつながります。
くも膜下出血
くも膜下出血は、脳動脈瘤の破裂によって起こる脳卒中の一種で、突然の激しい頭痛が代表的な症状です。
脳ドックでは、発症前の未破裂脳動脈瘤の段階で見つかることがあります。平均年齢50歳、男女1:1、併存疾患なしの方を対象とした研究では、脳動脈瘤の保有率は3.2%という結果が報告されています。女性は男性の約1.61倍、年齢が高くなるほど保有率も上がる傾向が示されています。
発見後は脳動脈瘤の大きさや形状に応じて、経過観察や治療の検討が行われます。
頸動脈狭窄症
頸動脈狭窄症とは、首にある頸動脈が動脈硬化によって狭くなる病気です。進行すると脳への血流が低下し、脳梗塞のリスクが高まる可能性があります。
脳ドックでは、頸動脈エコー検査によって血管の狭窄やプラーク(動脈硬化の塊)の有無を確認します。症状がない段階でも見つかることがあり、生活習慣の改善や薬物治療のきっかけとなることがあります。
脳梗塞
脳梗塞は、脳の血管が詰まることで血流が途絶え、脳の組織がダメージを受ける病気です。手足の麻痺や言語障害など、日常生活に影響のある後遺症を残す可能性があります。
脳ドックでは、将来的な脳卒中のリスクサインともいえる小さな脳梗塞の痕跡が見つかることがあります。また、脳梗塞の前兆とされる一過性脳虚血発作(TIA)の発見にも有用です。
TIA発症後は短期間で脳梗塞に移行するリスクが高く、特に発症から48時間以内のリスクが高いとされています。TIA後90日以内の脳梗塞発症率は約15〜20%で、その半数は48時間以内に起こると報告されているため、TIAを疑う症状が出た際は速やかに医療機関を受診することが重要です。
無症候性脳梗塞
無症候性脳梗塞は、症状が出ないまま発生している脳梗塞です。日常生活への支障もなく、脳ドックや健康診断で偶然見つかるケースが多いとされています。
この状態は将来的な脳梗塞や認知機能低下のリスクと関連する可能性があり、生活習慣の改善や継続的な管理が重要とされています。
脳動脈瘤
脳動脈瘤は、脳の血管の一部がこぶのように膨らむ病気です。破裂するとくも膜下出血を引き起こすリスクがあります。
脳ドックでは、MRA(磁気共鳴血管撮影)によって血管の形状を詳しく確認し、動脈瘤の有無を評価します。全ての脳動脈瘤がすぐに治療対象となるわけではありませんが、くも膜下出血の予防には早期発見と適切な対処が重要です。
無症候性微小脳出血
無症候性微小脳出血とは、非常に小さな出血が脳内に生じている状態のことです。MRI検査で偶然見つかることがあります。
高血圧や動脈硬化との関連が指摘されており、将来的な脳出血や認知機能低下のリスク因子となる可能性があるとされています。発見された場合は、血圧管理などのリスクコントロールを行います。
脳腫瘍
脳腫瘍は脳に発生する腫瘍であり、良性と悪性のものがあります。初期段階では自覚症状がないことも多く、脳ドックが早期発見につながる有用な方法です。
腫瘍の種類や大きさ、発生部位によって治療方針は大きく異なり、経過観察・手術・放射線治療などが検討されます。脳腫瘍は、早期発見によって治療の選択肢が広がります。
脳萎縮
脳の体積が減少している状態が脳萎縮です。加齢に伴ってある程度は誰にでも見られる変化ですが、進行の程度によっては認知症などの疾患と関連する場合があります。
脳ドックでは、MRIによって脳の形態を確認し、年齢相応かどうか、異常な進行がないかを評価します。
脳ドックで異常が見つかったら?

脳ドックで「異常あり」と判定されても、すぐに治療が必要になるとは限りません。所見の内容によって、再検査・治療・経過観察のいずれかを判断します。
脳ドックMRIに関する研究では、異常所見がみられた症例に対し、追加の評価が必要だったのは1.3%、手術に至ったのは0.27%という結果が報告されています。つまり、異常が見つかっても、その多くは直ちに手術になるわけではないのです。
また、脳ドックで見つかった所見は、画像だけで確定できるものばかりではありません。MRAで脳動脈瘤が疑われても、別の画像検査では否定されることがあります。
再検査になるケース
再検査になるのは、画像上の異常に対して治療や管理を行うべきか追加で確認する必要がある場合です。
例えば、MRAで脳動脈瘤が疑われた場合に、CTAや造影MRIなど別の検査で詳しく確認することがあります。
再検査の対象になりやすいのは、未破裂脳動脈瘤や脳腫瘍の疑い、血管の狭窄、無症候性脳梗塞の評価が必要な所見などです。
治療を行うケース
治療が検討されるのは、将来的な発症リスクが高いと考えられる所見や、すでに治療介入が望ましいと判断される病変が見つかった場合です。
代表例としては、破裂リスクを考慮すべき未破裂脳動脈瘤、治療方針の検討が必要な脳腫瘍、進行した頸動脈狭窄などが挙げられます。
未破裂脳動脈瘤については、年齢や全身状態、動脈瘤の大きさ、部位、形状、施設の治療成績などを踏まえて治療適応を検討することが推奨されています。早期発見によって、破裂後ではなく未破裂の段階で治療を検討できる点は脳ドックの大きな意義といえるでしょう。
経過観察をするケース
脳ドックで見つかる異常の中には、今後の変化をみていくべき所見もあります。小さな未破裂脳動脈瘤、無症候性脳梗塞、軽度の脳萎縮、加齢性変化などは、定期検査で状態を確認していくことがあります。
特に、無症候性脳梗塞は、将来の症候性脳梗塞や認知機能障害の高リスク群とされており、MRIや頸部エコーを含めた経過観察が必要です。また、高血圧は重要な危険因子であるため、経過観察とあわせて降圧治療や生活習慣の見直しが重視されます。
経過観察は「何もしない」という意味ではなく、再発予防・進行予防のために継続して管理していく対応です。
まとめ

脳ドックで異常が見つかっても、直ちに重大な病気や手術を意味するわけではありません。健康な人が脳ドックを受けて、手術に至ったケースはごくわずかです。
脳ドックで異常を指摘された場合に大切なのは、過度に不安にならず、どういった対応が必要なのかを医師に確認することです。
平尾病院では、高性能MRIによる脳ドックを行っております。ご家族やパートナーと一緒に受けられるペアコースもご用意しておりますので、脳ドックを検討している方はお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者
平尾病院 医師 三木 浩一
大正15年創業以来、地域に根ざした脳神経外科診療を担っています。脳卒中・頭痛・認知症など幅広い脳神経疾患に対応するとともに、リハビリテーション医療や慢性期医療にも注力。お子様からご高齢の方まで、患者さん一人ひとりの背景や思いに寄り添った医療の提供を目指しています。
専門資格
- 医学博士
- 日本頭痛学会 専門医
- 日本脳神経外科学会 専門医
- 日本脳卒中学会 専門医
- 日本認知症学会 専門医
略歴
- 帝京大学医学部 卒業
- 福岡赤十字病院 勤務
- 福岡大学病院 勤務
- 福岡大学救命救急センター 勤務
- 釧路労災病院 勤務
- 福岡東医療センター 勤務
- 白十字病院 勤務
- 平尾病院 勤務
所属学会
- 日本頭痛学会
- 日本脳神経外科学会
- 日本脳卒中学会
- 日本リハビリテーション医学会
- 日本認知症学会