脳の病気・症状

Brain disease

脳出血と脳梗塞の違いは?原因や症状、重症度をわかりやすく解説

屋外で男性が前かがみになり、片手を額に当てて目眩や頭痛に耐えているような様子

脳出血と脳梗塞は、いずれも「脳卒中」と呼ばれる病気の一種ですが、その仕組みや症状、治療法には大きな違いがあります。

「何がどう違うのかわからない」「どちらの方が重症度が高い?」といった疑問にお答えするため、本記事では脳出血と脳梗塞の違いをわかりやすく解説します。

それぞれの重症度や回復の見込みについてもまとめているので、正しい知識を身につけるための参考にしてください。

脳出血と脳梗塞は「脳卒中」の一種

片方の手でもう片方の手の指を掴み、しびれや痛みを確かめるようにしている手元のアップ

脳卒中とは、脳の血管の異常によって、脳の一部に十分な血液が届かない・出血が起こるなどして、脳の機能が障害される状態のことです。

脳は酸素や栄養を血液によって供給されているため、血流が途絶える、あるいは出血によって圧迫されると、短時間でも神経細胞にダメージが生じます。その結果、手足の麻痺や言語障害、意識障害などさまざまな症状が現れます。

脳出血やくも膜下出血は「血管が破れるタイプ」、脳梗塞は「血管が詰まるタイプ」の脳卒中に分類されます。

脳の神経細胞は一度ダメージを受けると元に戻りにくいため、発症後どれだけ早く治療を開始できるかがその後の回復や後遺症に大きく影響するポイントです。脳卒中の治療は時間との勝負なので、異変に気づいた場合は速やかに医療機関を受診することが重要です。

脳卒中の種類

「脳出血」「脳梗塞」「くも膜下出血」の病名と、それぞれの発生部位や血栓などの位置を示した脳の断面イラスト

脳卒中は、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の3つに大別されます。ここからは、それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。

脳梗塞

脳梗塞は、脳の血管が詰まることで血流が途絶え、脳の一部が酸素不足に陥る病気です。脳卒中の中でも最も発症頻度が高く、全脳卒中の約7割を占めます。

原因として多いのは、動脈硬化による血管の狭窄や血栓の形成です。心房細動などの不整脈がある場合、心臓内でできた血栓が脳へ流れて血管を塞ぐことがあります(心原性脳塞栓症)。

脳梗塞は原因によって、動脈硬化による「アテローム血栓性脳梗塞」、細い血管が詰まる「ラクナ梗塞」、心臓由来の血栓による「心原性脳塞栓症」などに分類されます。

脳梗塞では、片側の手足の麻痺・しびれ・ろれつが回らない・言葉が出にくいといった症状がみられます。比較的ゆっくり進行することが多いですが、一部では突然発症するケースもみられます。

参考:日本生活習慣病予防協会「脳血管疾患で治療を受けている総患者数は188万4,000人(令和5年患者調査)」

脳出血

脳出血は、脳内の血管が破れて出血し、その血液が脳組織を圧迫することで障害が生じる病気です。出血は被殻や視床、小脳などさまざまな部位で起こり、出血した場所によって現れる症状が異なる点も特徴です。

最大のリスク因子は高血圧であり、長年の血圧上昇によって血管がもろくなることで発症しやすくなります。そのほか、脳血管の異常や抗凝固薬の影響などが関与する場合もあります。

症状は突然現れることが多く、激しい頭痛や吐き気、嘔吐に加えて、意識障害や手足の麻痺といった神経症状が急速に進行するのが特徴です。出血量や部位によっては、短時間で重症化することも少なくありません。

くも膜下出血

くも膜下出血は、脳の表面にある「くも膜下腔」と呼ばれる空間で出血が起こる病気です。主な原因は、脳の血管にできたこぶ(脳動脈瘤)の破裂とされています。

特徴的な症状は「バットで殴られたような」と表現される突然の激しい頭痛です。これまでに経験したことのない強い痛みと共に、吐き気や意識障害を伴うこともあります。

発症時点で重篤な状態に陥ることも多く、脳卒中の中でも特に命に関わるリスクが高い病気として知られています。

脳出血と脳梗塞の違い

「脳出血」と「脳梗塞」の2つの症状について、脳内の血管の破裂や血栓による詰まりの様子を比較解説したイラスト

脳出血と脳梗塞はどちらも脳卒中に分類される病気ですが、原因や症状、治療法に本質的な違いがあります。ここからは、両者の違いを発症の仕組み・症状・治療法に分けて解説します。

発症の仕組みの違い

脳出血と脳梗塞の最大の違いは、血管トラブルの種類です。

脳出血は、脳の血管が破れて出血し、その血液が周囲の脳組織を圧迫することで神経障害が起こります。特に高血圧によって血管が弱くなっている場合に発症しやすく、出血量が多いほど急激に状態が悪化する傾向があります。

一方で脳梗塞は、血管が詰まることで血流が途絶え、脳細胞に酸素や栄養が届かなくなる病気です。動脈硬化による血管の狭窄や、血栓が詰まることが主な原因で、発症後は時間の経過とともに脳細胞のダメージが広がります。

つまり、脳出血は「血管が破れる病気」、脳梗塞は「血管が詰まる病気」であり、この違いがその後の症状や治療方針に大きく影響します。

症状の違い

脳出血と脳梗塞は、いずれも手足の麻痺やしびれ、ろれつが回らないといった共通の症状が現れることがあります。ただし、症状の出方には多少の違いがみられます。

脳出血は突然の激しい頭痛や吐き気、意識障害を伴うケースが多く、短時間で症状が悪化しやすい点が特徴です。出血による脳の圧迫が急速に進むため、重症化しやすい傾向があります。

一方、脳梗塞では症状が徐々に進行するケースが多いです。「朝起きたら手足が動かしにくい」「気づいたらろれつが回らない」といった形で発見されることもあります。(心原性脳塞栓症などでは突然重い症状が出る場合もあるため、進行がゆっくりとは限りません)

また、いずれの病気も障害を受けた脳の部位によって症状が異なり、運動機能・言語機能・視野など、さまざまな機能に影響が及びます。

治療法の違い

脳梗塞では、詰まった血管を再開通させることが最優先となり、発症から4.5時間以内であれば、血栓を溶かす治療(t-PA静注療法)が行われることがあります。

場合によっては、カテーテルを用いて血栓を直接取り除く血管内治療(機械的血栓回収療法)が選択されるケースもあります。

一方、脳出血では出血の拡大を防ぐことが重要なポイントです。血圧のコントロールや止血管理が中心となり、出血量が多い・脳への圧迫が強い場合には血腫を取り除くための外科手術が検討されます。

このように、脳梗塞は「血流を再開させる治療」、脳出血は「出血を抑えて圧迫を軽減する治療」と方向性が大きく異なります。

生活への影響の違い

脳出血と脳梗塞は、いずれも後遺症によって日常生活に影響を及ぼす可能性があります。手足の麻痺やしびれ、言語障害などは共通してみられる症状であり、歩行や食事、会話といった基本的な動作に支障が出ることがあります。

脳出血は意識障害や広範囲の機能障害が残るケースが多いため、日常生活への影響も大きくなりやすい傾向があります。

一方、脳梗塞は症状の程度によっては軽度で済む可能性があります。広範囲に及んだ場合には長期的なリハビリが必要です。

いずれの場合も記憶力や注意力の低下といった高次脳機能障害がみられることがあり、社会復帰や仕事への影響が生じるケースもあります。発症後の生活の質は、早期治療と継続的なリハビリによって大きく左右されます。

脳出血と脳梗塞はどちらが重症?

病院のベッドに上体を起こして座りながら本を手に持っている男性

脳出血と脳梗塞の重症度は、出血や梗塞が起こった部位(範囲)、治療までの時間で大きく左右され、一概に「どちらが重症」と断定できるものではありません。

一般的な傾向としては、脳出血の方が急激に症状が悪化しやすく、発症直後の死亡率が高いとされています。出血によって脳が強く圧迫されることで、短時間で意識障害や呼吸障害に至るケースもあるからです。

一方、脳梗塞は広範囲に及んだり重要な部位に梗塞が起こった場合には、重度の後遺症が残る可能性があります。特に、発症から治療までの時間が遅れるほど、回復が難しくなる傾向があります。

いずれの病気も共通して言えるのは、どれだけ早く治療を開始できるかが予後を大きく左右するという点です。顔のゆがみや手足の麻痺、言葉のもつれなどの症状に気づいた場合は、迷わず医療機関を受診することが重要です。

脳出血と脳梗塞は完治する?

両手で頭を抱え込むようにしてうつむき、頭痛や強いストレスに耐えているような人物の後ろ姿

脳出血や脳梗塞がどこまで回復するかは、発症した場所や損傷の程度、そして治療開始までの時間によって大きく異なります。

軽症であれば、後遺症がほとんど残らず日常生活に復帰できるケースもありますが、脳のダメージが大きいほど麻痺や言語障害、高次脳機能障害などが残る可能性は高くなります。

脳の神経細胞は一度損傷を受けると完全には元に戻らないため、完治というよりも「どこまで機能を回復できるか」が重要なポイントです。

患者さんの回復を支えるのがリハビリテーションです。発症後できるだけ早い段階からリハビリを開始することで、残された機能を活かしながら回復を目指せます。

また、再発予防も非常に重要です。脳卒中は再発しやすい病気であり、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの管理に加え、禁煙や適度な運動、食生活の見直しといった生活習慣の改善が求められます。

まとめ

人間の横顔の輪郭とその中に白いジグソーパズルで形成された脳のイラスト。パズルの1ピースが外側に外れている様子。

脳出血と脳梗塞は、いずれも脳の血管トラブルによって起こる「脳卒中」に分類される病気ですが、その原因や症状、治療法には明確な違いがあります。

どちらも命に関わる病気であり、後遺症が残るリスクもあるため、早期発見・早期治療が何より重要です。日頃から生活習慣を整え、異変に気づいた際には迅速に対応できるよう、正しい知識を身につけておくことが大切です。

「自分の症状はどちらの可能性があるのか」を見極めるためには、できるだけ早く脳神経外科を受診し、画像検査で確認することが大切です。平尾病院では、患者さん一人ひとりの症状に合わせてMRIによる迅速な鑑別診断と再発予防のフォローを行っています。気になる症状があれば、一度ご相談にお越しください。

この記事の監修者

平尾病院 医師 三木 浩一

大正15年創業以来、地域に根ざした脳神経外科診療を担っています。脳卒中・頭痛・認知症など幅広い脳神経疾患に対応するとともに、リハビリテーション医療や慢性期医療にも注力。お子様からご高齢の方まで、患者さん一人ひとりの背景や思いに寄り添った医療の提供を目指しています。

専門資格

  • 医学博士
  • 日本頭痛学会 専門医
  • 日本脳神経外科学会 専門医
  • 日本脳卒中学会 専門医
  • 日本認知症学会 専門医

略歴

  • 帝京大学医学部 卒業
  • 福岡赤十字病院 勤務
  • 福岡大学病院 勤務
  • 福岡大学救命救急センター 勤務
  • 釧路労災病院 勤務
  • 福岡東医療センター 勤務
  • 白十字病院 勤務
  • 平尾病院 勤務

所属学会

  • 日本頭痛学会
  • 日本脳神経外科学会
  • 日本脳卒中学会
  • 日本リハビリテーション医学会
  • 日本認知症学会

このページに関連するキーワード