脳の病気・症状

Brain disease

脳出血の原因はストレス?前触れはある?セルフチェックと予防法

暗い部屋のベッドの端に腰掛け、逆光のシルエットの中で両手で頭を抱えてうつむいている人物

精神的ストレスによって頭痛やめまいなどの症状が出ると、重大な病気が隠れていないか不安になるものです。ストレスは血圧上昇や生活習慣の乱れを引き起こすため、間接的に脳出血のリスクを高めるおそれがあります。

本記事では、ストレスと脳出血の関係をわかりやすく解説します。脳出血の前兆とすぐにできるセルフチェックもまとめているので、ストレスによる体調不良でお悩みの方はぜひ最後までお読みください。

脳出血とは

「脳出血」という見出しと脳のイラスト。「脳内の細い動脈が破れて出血が起こり、脳を壊したり圧迫したりすることで様々な障害が生じる。」という解説文が含まれている。

脳出血とは、脳の中の血管が破れ、流れ出た血液が脳の組織を圧迫・損傷する病気です。脳卒中の一種に分類され、突然発症した後に短時間で症状が悪化する特徴があります。

出血した血液が脳内にたまると、周囲の神経細胞を傷つけたり、脳全体を圧迫したりすることで、さまざまな機能障害を引き起こします。

脳出血は脳梗塞と比べて急激に状態が悪化しやすく、命に関わるケースも少なくありません。発症後の対応スピードが予後を左右するため、異変に気づいた時点で迅速に医療機関を受診することが重要です。

脳出血はストレスが原因?

黄色い人間の頭部シルエットの脳部分に複雑な線が描かれ、頭上へ向けて放射状に無数の線が広がっているストレスや混乱を表現したイラスト。

脳出血で脳の血管が破れる最大の原因は高血圧ですが、ストレスも無関係ではありません。ここからは、ストレスと脳出血の関係を医学的な視点から解説します。

ストレスは直接的な原因ではない

脳出血の原因は血管の破綻です。脳の血管がもろくなり、耐えきれずに破れることで出血が起こります。

ストレスそのものが血管を破るわけではなく、脳出血を引き起こす直接的な原因になるとは考えられていません。ただし、ストレスがさまざまな身体反応を引き起こし、その結果として発症リスクに関与する可能性は指摘されています。

ストレスが血圧を上昇させる

強いストレスを感じると交感神経が優位になり、心拍数や血圧が上昇します。この反応は一時的なものであれば問題ありませんが、急激な血圧上昇は脳の血管に大きな負担をかけます。

特にリスクが高いのは、高血圧がある方や血管が弱くなっている方です。血圧の急上昇が引き金となり、血管が破れるリスクが高まります。

また、寒暖差や強い怒り、過度な緊張なども血圧を急激に上げる要因となります。

慢性的なストレスはリスク要因になる

慢性的なストレスは、脳出血のリスクを高める間接的な要因です。睡眠不足や自律神経の乱れ、さらにはストレス解消の手段として過食や飲酒、喫煙が増えてしまいます。

これらの生活習慣は高血圧や動脈硬化の原因となる可能性があり、結果として脳出血の発症リスクを高める方向に働きます。

ストレスは脳出血の直接原因ではありませんが、無視できない背景要因であることは事実です。日頃からストレスを適切にコントロールし、血圧や生活習慣を整えることが脳出血の予防につながります。

脳出血の主な原因

テーブルの上に置かれた白い灰皿と一本の火がついたタバコ

脳出血は突然発症する病気ですが、その背景にはいくつかの明確な危険因子が存在します。ここからは、脳出血の主な原因を詳しく解説します。

高血圧

脳出血の最大の原因とされているのが高血圧です。長期間にわたって血圧が高い状態が続くと、血管の内側に強い圧力がかかり続け、血管壁がもろくなっていきます。

特に脳内の細い血管はダメージを受けやすく、血圧の上昇によって破れやすい状態になります。その状態が続くと、ある日突然血管が破れて脳出血を発症することがあります。

喫煙

喫煙は血管にさまざまな悪影響を及ぼします。タバコに含まれる有害物質は血管内皮を傷つけ、動脈硬化を進行させる大きな要因となります。

血管の弾力が失われると血圧の変動に耐えにくくなり、血管が破れやすい状態になります。喫煙は脳出血だけでなく、脳梗塞や心筋梗塞などのリスクも高めることが知られています。

過度の飲酒

アルコールの過剰摂取も脳出血のリスクを高める要因です。飲酒は血圧を上昇させるほか、血管に負担をかけることで出血のリスクを高める可能性があります。

また、慢性的な飲酒習慣は生活習慣の乱れにつながりやすく、高血圧や脂質異常症などの発症にも関与します。これらは脳出血の背景となる重要なリスク因子です。

動脈硬化

動脈硬化とは、血管が厚く硬くなり、しなやかさを失った状態のことです。血管が硬くなると、血圧の変化に柔軟に対応できなくなり、血管壁に負担がかかりやすくなります。

その結果、血管がもろくなったり破れやすくなったりして、脳出血のリスクが高まってしまうのです。動脈硬化は加齢に伴って進行するほか、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病とも深く関係しています。

脳動静脈奇形などの血管異常

脳出血は生活習慣だけでなく、生まれつきの血管異常が原因となることもあります。代表的なものが「脳動静脈奇形(AVM)」などの先天性血管異常です。

AVMは動脈と静脈が異常につながっている状態で、血流の負担が大きく、破裂しやすい特徴があります。若年層で脳出血を発症した場合には、このような血管異常が原因として疑われることがあります。

脳出血の前触れ・初期症状

ソファーに座り、目を閉じて辛そうな表情で額に手を当てている男性

脳出血は突然発症することが多く、明確な前兆があらわれるケースはあまり多くありません。ただし、ごく一部では発症前や初期段階に頭痛やしびれなどの異変を感じることもあります。

起こりうる症状には次のものがあります。

  • 突然の強い頭痛
  • めまい・ふらつき
  • 手足のしびれや脱力
  • 視界の異常
  • 吐き気や意識障害など

脳出血でも頭痛が起こることはありますが、「バットで殴られたような激しい頭痛」は、同じ脳卒中でも「くも膜下出血」の典型的な特徴です。一般的な脳出血では、頭痛よりも先に、体の片側の麻痺、しびれ、言葉の出にくさといった症状が先行し、その後に頭痛や意識障害が強まっていくケースが多く見られます。

重症化を防ぐには、こうしたサインにいち早く気づき、早急に医療機関を受診することが重要です。

脳出血のセルフチェック

両手のひらのに脳卒中の早期発見の指標である「F A S T(Face, Arm, Speech, Time)」の文字が重ねられたイメージ画像

脳出血は早期発見・早期対応が予後を大きく左右するため、日常の中で異変に気づけるよう代表的な症状を知っておくことが大切です。

世界的に広く使われているセルフチェック方法が「FAST」です。これは脳卒中のサインを簡単に確認できる指標で、以下の3つの症状と早期受診の重要性を示しています。

Face(顔)
顔の片側がゆがむ・口角が下がる
Arm(腕)
両腕を上げた時に片方だけ下がる
Speech(言葉)
ろれつが回らない・言葉が出にくい
Time(時間)
上記の症状があればすぐに受診・救急要請

顔や腕、言葉以外にも、以下の症状がみられる場合は注意が必要です。

  • 突然の激しい頭痛
  • 片側の手足のしびれや麻痺
  • ろれつが回らない
  • 視界の異常
  • 強いめまいやふらつき

症状が急激に現れたり短時間で悪化している場合は、迷わず救急要請を検討しましょう。

脳出血になったら?家族ができること

水色のストライプシャツを着た人物が、グレーの服を着た人の手を優しく両手で包み込むように握っている手元のアップ

脳出血が疑われる場面では、周囲の人の対応がその後の経過に大きく影響します。迅速かつ適切な行動が、命を守ることにつながります。

まず重要なのは、異常に気づいた時点ですぐに救急車を呼ぶことです。脳出血は時間との勝負であり、対応が遅れるほど後遺症や死亡リスクが高まります。

あわせて、発症した時間をできるだけ正確に把握しておくことも大切です。これは治療方針の判断に重要な情報となります。

医療機関に搬送された後は、家族がこれまでの病歴や服薬状況を伝えることで診断や治療がスムーズに進みます。また、急性期を乗り越えた後は、リハビリや生活習慣の見直しを支えることも重要な役割となります。

脳出血は、発症後のサポートも含めて長期的な支援が欠かせません。ご家族の理解や支えは、患者さんの回復の可能性を高め、再発予防にもつながります。

脳出血にまつわる質問

両手のひらで包まれた人間の頭部シルエットの脳位置に黒い混線が描かれている、悩みや精神的混乱を表すイラスト。

脳出血の回復率は?

脳出血の回復率は一律に示せるものではなく、出血量や出血した部位、発症から治療開始までの時間などによって大きく異なります。

一般的に、出血量が少なく、重要な機能を担う部位へのダメージが軽い場合は、比較的回復が早い傾向があります。

また、早期治療や発症後のリハビリテーションも回復に大きく影響する要素です。リハビリを継続することで機能の改善がみられ、軽症であれば日常生活に復帰したり、社会復帰が可能となるケースもあります。

若い女性でも脳出血になる?

脳出血は高齢者に多い病気ですが、若年層であっても発症する可能性はあります。若い世代の脳出血は、生活習慣よりも血管の異常が原因となるケースが一定数みられます。

また、女性の場合は妊娠や出産に関連する妊娠高血圧症候群がリスクとなることもあります。

脳出血の平均余命は?

脳出血の平均余命についても、個人差が大きく一概に示すことはできません。発症時の年齢や重症度、出血の部位や範囲、さらに合併症の有無などによって予後は大きく左右されます。

余命とは少し異なりますが、脳出血後の生存率を調査した研究にはいくつかの報告があります。日本国内(栃木県)の調査では脳出血の5年生存率は約58%と報告されている一方、海外の研究では1年生存率約38%・5年生存率約24%という数字も示されており、地域や対象集団によって幅があります。

近年は医療技術の進歩により救命率が向上しており、適切な治療とリハビリを受けることで長期的に生活を続けられるケースが増えています。後遺症が残った場合でも、リハビリや支援体制によって生活の質を維持・向上させることが可能です。

参考:脳卒中患者の生命予後と死因の5年間にわたる観察研究(脳卒中 32:572-578, 2010)

参考:Smajlović D, et al. Five-year survival after first-ever stroke. Bosn J Basic Med Sci.2006;6(3):17-22. doi:10.17305/bjbms.2006.3138

まとめ

医師が診察室のデスクで身振りを交えながら患者へ説明を行っている様子

脳出血は、高血圧をはじめとしたさまざまな要因が関係しています。ストレスは直接の原因ではないものの、血圧上昇や生活習慣の乱れを通じて間接的にリスクを高める可能性は否定できません。

日頃から血圧管理や生活習慣の見直しを行い、ストレスとうまく付き合うことが、脳出血の予防につながります。万が一に備えて正しい知識を身につけておくことが、自分や大切な人の命を守る行動につながります。

「ストレスや生活習慣で脳に影響が出ていないか」を確かめるためには、脳ドックで現在の脳血管の状態を確認しておく方法もあります。平尾病院では、患者さん一人ひとりの状態に合わせてMRI・MRAによる検査を行い、生活習慣と合わせた予防プランをお伝えしています。気になることがあれば、一度ご相談にお越しください。

この記事の監修者

平尾病院 医師 三木 浩一

大正15年創業以来、地域に根ざした脳神経外科診療を担っています。脳卒中・頭痛・認知症など幅広い脳神経疾患に対応するとともに、リハビリテーション医療や慢性期医療にも注力。お子様からご高齢の方まで、患者さん一人ひとりの背景や思いに寄り添った医療の提供を目指しています。

専門資格

  • 医学博士
  • 日本頭痛学会 専門医
  • 日本脳神経外科学会 専門医
  • 日本脳卒中学会 専門医
  • 日本認知症学会 専門医

略歴

  • 帝京大学医学部 卒業
  • 福岡赤十字病院 勤務
  • 福岡大学病院 勤務
  • 福岡大学救命救急センター 勤務
  • 釧路労災病院 勤務
  • 福岡東医療センター 勤務
  • 白十字病院 勤務
  • 平尾病院 勤務

所属学会

  • 日本頭痛学会
  • 日本脳神経外科学会
  • 日本脳卒中学会
  • 日本リハビリテーション医学会
  • 日本認知症学会