脳の病気・症状

Brain disease

【脳梗塞】後遺症が残る確率やリハビリについて

チェック柄の服を着た人が、リハビリ用の金属製平行棒を右手でしっかりと握っている手元のアップ

脳梗塞は命に関わることもある重大な病気で、救命された後もなんらかの後遺症が残る可能性が高いといわれています。主な後遺症には手足の麻痺や言語障害、飲み込みにくさなどがあり、いずれも日常生活に大きな影響を及ぼす症状です。

後遺症の程度は患者さんによって異なり、発症から治療までの時間やリハビリの開始時期によっても大きく左右されます。早期対応によって回復が期待できるケースもあるため、正しい知識を持ち、適切な対処をすることが重要です。

本記事では、脳梗塞の後遺症についてわかりやすく解説します。

脳梗塞の基礎知識

人間の横顔シルエットの頭部の中で、白いパズルで構成された脳から1つのピースが外れて浮いているイラスト

脳梗塞は、脳の血管が詰まることで血流が途絶え、脳細胞に酸素や栄養が届かなくなる病気です。血流が遮断されると脳の神経細胞はダメージを受け、全身にさまざまな神経症状が現れるのが特徴です。

日本では脳卒中の中でも脳梗塞の割合が最も高く、全体の約7割を占めるとされています。突然起こることが多いものの、手足のしびれや言葉のもつれなど、前兆のような症状が一時的に現れるケースもあります。

脳梗塞の原因

脳梗塞は、脳の血管が何らかの原因で詰まることで発症します。背景として多いのが動脈硬化です。

動脈硬化とは、血管の内側にコレステロールなどが蓄積して血流が妨げられている状態のことです。高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病と密接に関係しており、これらを放置することで脳梗塞の発症リスクが高まります。

また、心房細動などの不整脈がある場合、心臓内でできた血栓が血流に乗って脳へ運ばれ、血管を詰まらせることもあります。

さらに、喫煙や肥満、過度の飲酒といった血管に負担をかける生活習慣も、脳梗塞のリスクを高める危険因子の一つです。

脳梗塞の種類

脳梗塞は、原因や発症の仕組みによっていくつかのタイプに分類されます。

種類 特徴
アテローム血栓性脳梗塞 動脈硬化によって太い血管が狭くなり血栓ができるタイプ。比較的広い範囲に影響が出るとされる。
ラクナ梗塞 脳の細い血管が詰まるタイプ。高血圧との関連が強く、小さな梗塞が多発することもある。
心原性脳塞栓症 心臓でできた血栓が脳に飛んで詰まるタイプ。突然発症し、重症化しやすい。

脳梗塞は種類によって発症の背景や重症度、治療方針が異なるため、正確な診断と適切な対応が重要です。

脳梗塞の後遺症

人間の横顔シルエットの頭上に、白い文字ブロックで「APHASIA(失語症)」という単語がアーチ状に並べられている

脳梗塞を発症すると脳細胞がダメージを受けるため、全身のさまざまな部位に後遺症が現れる可能性があります。症状の内容や程度は損傷した脳の場所や範囲によって異なり、運動機能や言語、認知、感覚など多岐にわたります。

ここからは、脳梗塞の代表的な後遺症を解説します。

運動麻痺

運動麻痺は、脳梗塞で最も多くみられる代表的な後遺症です。脳の損傷部位と反対側の手足に症状が現れることが多く、軽度のものから全く動かせない状態まで幅があります。

歩行や着替え、食事といった基本的な日常動作に影響が出ることもあり、生活の自立度に大きく関わります。一方で、発症早期からリハビリテーションを開始することで、運動機能の回復が期待できるケースもあります。

言語障害(失語症)

脳梗塞によって言葉を司る脳の領域が損傷すると、失語症と呼ばれる言語障害が起こることがあります。話す・聞く・読む・書くといった言語機能に影響が出るため、言葉が出にくくなったり相手の話を理解しづらいなどの症状がみられます。

失語症は、知的能力の低下そのものではなく、言葉を理解したり表現したりする機能に障害が生じた状態です。適切な支援によってコミュニケーション能力の改善が期待できるため、言語療法などのリハビリが重要な役割を担います。

嚥下障害

嚥下障害は、食べ物や飲み物をうまく飲み込めなくなる後遺症です。むせやすくなったり、食事に時間がかかったりするほか、食べ物や唾液が気道に入る「誤嚥(ごえん)」が起こることもあります。

誤嚥は誤嚥性肺炎の原因となるため注意が必要です。症状に応じて食事の形態を調整したり、嚥下機能を改善するリハビリを行います。

高次脳機能障害

記憶や注意、判断力、感情のコントロールなどに影響が出る後遺症を高次脳機能障害といいます。物忘れが増える・集中力が続かない・段取りよく行動できないといった症状が特徴です。

外見からはわかりにくいことが多く、周囲の理解を得にくい点も高次脳機能障害の課題です。仕事や日常生活、人間関係に影響する場合もあり、リハビリや環境調整によるサポートが重要になります。

感覚障害

感覚障害では、手足や顔の感覚が鈍くなったり、しびれを感じたりする症状が現れます。温度や痛みの感覚が鈍ると、やけどやケガに気づきにくくなるリスクがあります。

感覚障害は運動麻痺と同時に起こるケースもあり、バランス感覚の低下による転倒リスクも懸念されます。日常生活では安全確認を徹底し、必要に応じてリハビリを行うことが大切です。

視覚障害

脳梗塞では、視野の一部が欠ける「半盲」などの視覚障害が起こることがあります。視界の一部が見えないことでものにぶつかったり、文字が読みづらいといった支障が生じます。

本人が自覚しにくい場合もあるため、周囲のサポートが重要です。視覚リハビリや生活環境の工夫によって、安全に生活できるよう支援していきます。

脳梗塞で後遺症が残る確率

ストライプ柄のパジャマを着た男性が、病室のベッドの上で上半身を起こし、手元で冊子を開いて持っている

脳梗塞の後遺症が残る確率は、損傷の範囲と「治療開始までの時間」に大きく左右されます。

日本脳卒中データバンク(2021年)のデータでは、約6割の患者さんが自立して退院している一方、残る3〜4割には介助が必要な障害が残っています。ただし、この「自立」には、日常生活は送れるものの「軽いしびれ」や「高次脳機能障害」といった軽微な後遺症を抱えるケースも含まれる点に注意が必要です。

後遺症を最小限に抑える鍵は、早期の血栓除去(t-PA療法や血栓回収療法)です。「おかしい」と感じてから治療までの時間が短いほど、脳細胞のダメージを抑え、回復の可能性を高めることができます。

参考:日本脳卒中データバンク 報告書 2025年

脳梗塞のリハビリ

リハビリ室の平行棒を両手で掴んで歩行訓練をする患者と、その横でサポートする医療従事者

脳梗塞後のリハビリは、失われた機能の回復や生活の質の向上を目的として行われます。発症直後から段階的に進められ、運動機能や言語、嚥下、日常的な動作など多方面にわたる回復を目指します。

回復には患者さん本人の努力だけでなく、医師やリハビリ専門職、看護師、家族など多くの関係者の支援が欠かせません。

ここからは、急性期・回復期・維持期のリハビリを詳しく解説します。

急性期のリハビリ

急性期のリハビリは、発症直後から数日以内に開始されます。全身状態を慎重に管理しながら、関節が固まるのを防ぐための運動や、早期離床を目的とした訓練が行われます。

この時期のリハビリは、ベッド上での手足の運動や、座る姿勢の練習といった軽い運動が中心です。早期から体を動かすことは、その後の回復に大きく影響するとされています。

また、誤嚥を防ぐための嚥下機能の評価や呼吸機能を保つためのケアといった合併症の予防も重要な目的の一つです。

回復期のリハビリ

回復期は、発症から数週間〜数ヶ月にかけて行われる重要な時期です。この段階では、機能回復を目指した本格的なリハビリが行われます。

歩行訓練や手の動作訓練に加え、作業療法や言語療法など、多職種によるアプローチが行われます。患者さんの状態によっては、回復期リハビリテーション病棟などの専門施設で集中的にリハビリを受けるケースもあります。

この時期は「回復のゴールデンタイム」とも呼ばれ、積極的にリハビリに取り組むことで機能改善が期待できる重要な期間です。

維持期のリハビリ

回復期以降も、機能の維持や生活の質の向上を目的として、リハビリは継続されます。自宅での自主訓練に加え、通所リハビリや訪問リハビリなどを行いながら、日常生活に即した訓練を行うことが一般的です。

再発予防のための運動習慣を取り入れることも重要であり、長期的な視点での取り組みが求められます。家族や地域の支援も含めた環境づくりが、患者さんの安定した生活につながります。

脳梗塞の後遺症で性格が変わる?

向かい合う2つの人間シルエットのうち、左側にはバラバラのパズルピース、右側には脳の形に組み上がったパズルが頭部に描かれている

脳梗塞の後遺症として、性格や感情の変化がみられることがあります。これは脳の損傷によって感情のコントロールや意欲に関わる機能が影響を受けるためです。

具体的には、怒りっぽくなる・意欲が低下する・気分が落ち込みやすくなるといった変化がみられることがあります。これらは脳機能の変化によるもので、本人の性格とは別の問題です。

周囲が適切に理解し支えることが、患者さんの安心感や回復につながります。必要に応じて医療機関や専門職に相談し、適切なサポートを受けることも検討されます。

まとめ

広げた両手のひらの上で包み込むように持たれたピンク色の脳の模型

脳梗塞は、その後の生活に影響する後遺症が残る可能性のある病気です。後遺症の内容や症状の程度はさまざまですが、早期治療と適切なリハビリによって回復が期待できるケースもあります。

発症時の迅速な対応に加え、回復期以降も継続的にリハビリや生活習慣の見直しに取り組むことが重要です。脳梗塞について正しく理解し、予防と早期対応を意識することが後遺症のリスク軽減につながります。

「再発しないためにどうすればいいか」を知るためには、退院後もかかりつけ医のもとで定期的なチェックを続けていくのが確実です。平尾病院では、患者さん一人ひとりの状態に合わせてMRIによる経過観察と血圧・血糖管理を行っています。退院後の経過観察先をお探しなら、一度ご相談にお越しください。

この記事の監修者

平尾病院 医師 三木 浩一

大正15年創業以来、地域に根ざした脳神経外科診療を担っています。脳卒中・頭痛・認知症など幅広い脳神経疾患に対応するとともに、リハビリテーション医療や慢性期医療にも注力。お子様からご高齢の方まで、患者さん一人ひとりの背景や思いに寄り添った医療の提供を目指しています。

専門資格

  • 医学博士
  • 日本頭痛学会 専門医
  • 日本脳神経外科学会 専門医
  • 日本脳卒中学会 専門医
  • 日本認知症学会 専門医

略歴

  • 帝京大学医学部 卒業
  • 福岡赤十字病院 勤務
  • 福岡大学病院 勤務
  • 福岡大学救命救急センター 勤務
  • 釧路労災病院 勤務
  • 福岡東医療センター 勤務
  • 白十字病院 勤務
  • 平尾病院 勤務

所属学会

  • 日本頭痛学会
  • 日本脳神経外科学会
  • 日本脳卒中学会
  • 日本リハビリテーション医学会
  • 日本認知症学会

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