脳の病気・症状
Brain disease
くも膜下出血の生存率について。入院期間や予後を詳しく解説

くも膜下出血は、脳の血管が破れて脳の表面に出血が広がる「脳卒中」の一種で、命に関わる可能性のある病気として知られています。
「くも膜下出血の生存率はどれくらいなのか」「社会復帰はできるのか」と不安になる方は少なくありません。
本記事では、くも膜下出血の生存率と後遺症をわかりやすく解説します。治療法や入院期間もまとめているので、患者さんやそのご家族はぜひ最後までお読みください。
くも膜下出血はどんな病気?

くも膜下出血とは、脳の表面にある血管が破れて、脳とくも膜の間にある「くも膜下腔(くもまくかくう)」に血液が広がる病気です。脳卒中(脳血管疾患)の一種であり、発症すると命に関わる可能性がある緊急性の高い病気として知られています。
原因の多くは、脳の血管にできた脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)の破裂です。動脈瘤は血管の一部がこぶ状に膨らんだ状態で、破裂するとくも膜下出血を引き起こします。
代表的な症状としてよく知られているのが、突然の激しい頭痛です。「バットで殴られたような痛み」「これまで経験したことのない強い頭痛」と表現されるような症状が現れます。頭痛のほかにも、吐き気・嘔吐・意識障害・けいれんなどを伴うことがあります。
くも膜下出血は発症後に急激に状態が悪化することもあるため、こうした症状が現れた場合は速やかに医療機関を受診することが重要です。
参考:厚生労働省 健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~ 「脳卒中(脳血管疾患)」
くも膜下出血になりやすい人
くも膜下出血の主な原因は脳動脈瘤の破裂であり、脳動脈瘤を持っている人は発症リスクが高いとされています。ただし、動脈瘤があっても必ず破裂するわけではなく、生活習慣や体質など複数の要因が関係すると考えられています。
例えば、高血圧は脳の血管に強い負担をかけるため、動脈瘤の形成や破裂のリスクを高める要因の一つです。また、喫煙や過度な飲酒などの生活習慣も、血管にダメージを与えることで発症リスクを高める可能性があります。
さらに、家族にくも膜下出血を発症した人がいる場合など、遺伝的要因が関係するケースもあります。発症年齢は40代から徐々に増え始め(中央値は男性が61歳、女性が70歳)、働き盛りの年代でも起こりうる病気です。
脳梗塞との違い
くも膜下出血と脳梗塞はどちらも脳卒中の一種ですが、両者は発症の原因が異なります。
脳梗塞は、血管が詰まることで脳への血流が途絶え、脳細胞がダメージを受ける病気です。一方、くも膜下出血は血管が破れて出血することで発症します。
症状の現れ方にも違いがあります。脳梗塞では麻痺やしびれ、ろれつ障害などの神経症状が前面に出ることが多く、くも膜下出血では突然の激しい頭痛が典型的です。
くも膜下出血は再出血のリスクがあるため、迅速な診断と治療が必要とされる点でも緊急性が高い病気といえます。
くも膜下出血の発生率

くも膜下出血は、脳卒中の中では発生頻度がそれほど高くありません。日本では、年間人口10万人あたり10〜20人程度が発症すると報告されています。
発症年齢は50〜70代に多い傾向があり、特に女性は高齢になるほど発症率が高まります。脳梗塞などと比べると患者数は多くないものの、発症すると重篤な経過をたどるリスクがある病気です。
くも膜下出血の生存率

くも膜下出血は重症度が高く、発症直後に亡くなることが多い病気です。医療機関に搬送される前に死亡する「院外死亡」も一定数存在するとされています。
厚生労働省が行った調査によると、2022年にくも膜下出血で亡くなった方は1万1,468人(男性4,317人・女性7,151人)、10万人あたりの死亡率9.4人という統計が発表されています。
くも膜下出血は医療機関に到着する前に亡くなるケースも含まれるため、単純な生存率の算出は難しいとされています。入院に至った患者さんに限った報告では、おおむね7割前後が発症1ヶ月時点で生存しているとされる一方、約3割が1ヶ月以内に亡くなるとの報告もあります。
ただし、救命された場合でも後遺症が残るケースがあるため、生存=完全回復ではない点には注意が必要です。
数字で見ると不安になるかもしれませんが、くも膜下出血は発症後の経過が個人によって大きく異なる病気です。早期に治療を受けることで救命につながるケースもあり、医療技術の進歩によって治療成績の向上が報告されています。
予後を左右する要素には、発症時の重症度や治療開始までの時間、年齢、合併症の有無などがあります。特に、年齢による影響は大きく、高齢の方よりも若年層の方が回復しやすい傾向があります。
参考:厚生労働省「令和4年(2022)人口動態統計(確定数)の概況 死因簡単分類別にみた性別死亡数・死亡率(人口10万対)」
くも膜下出血の治療法

くも膜下出血の治療では、再破裂を防ぐことが最も重要です。出血の原因となる脳動脈瘤が再び破裂すると死亡率が大きく上昇するため、発症後できるだけ早期(72時間以内)の治療が検討されます。
くも膜下出血の治療では、止血のために以下のいずれかの方法を行います。
| 治療法 | 特徴 |
|---|---|
| 開頭クリッピング術 | 頭蓋骨を開いて脳動脈瘤の根元を金属製のクリップで挟み、血液が動脈瘤の中に流れ込まないようにする方法。古くから行われている治療法で、コイル塞栓術と比較して長期的な再発率が低いという報告がある。 |
| コイル塞栓術(そくせんじゅつ) | カテーテルを血管の中に通して、動脈瘤の内部に細い金属コイルを詰める方法。開頭手術を行わないため、体への負担が比較的少ない。 |
どちらの治療法を選択するかは、動脈瘤の位置や形状、患者さんの年齢や全身状態などを考慮して決定されます。
また、くも膜下出血の治療では手術だけでなく、集中治療や合併症の管理も重要です。再出血や脳血管攣縮などの合併症を防ぐため、集中治療室(ICU)で厳重に管理されるのが一般的です。
くも膜下出血の平均的な入院期間

くも膜下出血の入院期間は患者さんの状態によって異なりますが、急性期治療だけで数週間、重症例や後遺症がある場合はさらに長期化することがあります。
発症直後の急性期には、集中治療室(ICU)などで全身状態を管理しながら治療が行われることが多いです。その後、状態が安定すると一般病棟での治療や経過観察が続きます。
ただし、出血の程度が重い場合や合併症が起こった場合には、入院期間がさらに長くなることもあります。また、後遺症が残ると回復期リハビリテーション病棟へ転院し、リハビリを継続する必要があります。
くも膜下出血の予後とリスク

くも膜下出血は命に関わる可能性がある病気であり、治療後もさまざまな合併症や後遺症が起こる可能性があります。予後は発症時の重症度や治療までの時間、年齢、合併症の有無などによって大きく左右されます。
ここからは、治療後のリスクを解説します。
再破裂
くも膜下出血において最も重大なリスクの一つが再破裂です。発症直後は再破裂の危険性が高いとされています。
再出血が起こると死亡率が大きく上昇するため、くも膜下出血ではできるだけ早く動脈瘤の処置を行うことが重要です。開頭クリッピング術やコイル塞栓術などの治療は、再破裂を防ぐことを目的として行われます。
脳血管攣縮
くも膜下出血の代表的な合併症として知られているのが、脳血管攣縮(のうけっかんれんしゅく)です。脳血管攣縮とは、出血によって脳の血管が収縮し、血流が低下する状態のことです。
発症後4〜14日(8〜10日目がピーク)程度の間に起こることがあり、血流が十分に保たれないと脳梗塞を引き起こす可能性があります。
脳血管攣縮はくも膜下出血の予後に大きく関わる合併症のため、集中治療下で血流や神経症状を注意深くモニタリングします。
水頭症
水頭症(すいとうしょう)も、くも膜下出血でみられる合併症の一つです。水頭症は、出血によって脳脊髄液(髄液)の循環が妨げられ、脳内に髄液がたまりやすくなる状態のことです。
頭痛や意識障害、歩行障害などの原因になることがあり、症状が強い場合には、余分な髄液を体内に流すためのシャント手術などの治療が行われることもあります。
後遺症
くも膜下出血では、脳へのダメージによって後遺症が残ることがあります。
手足が動きにくくなる片麻痺、言葉がうまく話せなくなる言語障害、記憶力や注意力の低下などが代表的な後遺症です。また、判断力や集中力などに影響が出る高次脳機能障害がみられることもあります。
こうした後遺症の改善や生活機能の回復のためには、早期からのリハビリテーションが重要とされています。
社会復帰と生活への影響
くも膜下出血からの回復には個人差があり、社会復帰までの期間も患者さんによって異なります。
症状が比較的軽い場合には、治療後に日常生活へ戻ることができるケースもあります。一方で、後遺症が残る場合には、長期的なリハビリや医療的フォローが必要です。
復職や日常生活の再開は、体調や回復状況に合わせて段階的に進めていくことが大切です。その過程では、医療スタッフや家族によるサポートも重要な役割を果たします。
家族にできること

くも膜下出血の治療や回復の過程では、ご家族の支えが大きな力になります。
急性期には、医療チームと連携しながら患者さんの状態を理解し、治療方針について情報を共有することが大切です。退院後には、リハビリテーションの継続や日常生活のサポートなど、生活面での支援が必要になる場面がいくつもあります。
また、患者さん本人は発症後に不安や落ち込みを感じることも少なくありません。そのため、ご家族による心理的な寄り添いや、安心して過ごせる環境づくりも回復を支える大きな力になります。
くも膜下出血は回復までに時間がかかることもありますが、家族や医療スタッフが協力して支えることで、長期的な回復につながる可能性があります。
まとめ

くも膜下出血の発症直後は命に関わる可能性があるため、早期の診断と治療が重要です。
生存率や回復の程度は、発症時の重症度や治療までの時間、年齢などによって大きく異なります。再破裂や後遺症などのリスクはありますが、早期に適切な治療を受けることで救命や回復の可能性を高めることができます。
突然の激しい頭痛など気になる症状がある場合には、速やかに医療機関を受診することが大切です。
平尾病院では、高度な医療が必要と判断される場合にも、総合病院・大学病院と連携し、円滑に治療を進めることが可能です。治療に関する不安やお悩みはお気軽にご相談ください。
この記事の監修者
平尾病院 医師 三木 浩一
大正15年創業以来、地域に根ざした脳神経外科診療を担っています。脳卒中・頭痛・認知症など幅広い脳神経疾患に対応するとともに、リハビリテーション医療や慢性期医療にも注力。お子様からご高齢の方まで、患者さん一人ひとりの背景や思いに寄り添った医療の提供を目指しています。
専門資格
- 医学博士
- 日本頭痛学会 専門医
- 日本脳神経外科学会 専門医
- 日本脳卒中学会 専門医
- 日本認知症学会 専門医
略歴
- 帝京大学医学部 卒業
- 福岡赤十字病院 勤務
- 福岡大学病院 勤務
- 福岡大学救命救急センター 勤務
- 釧路労災病院 勤務
- 福岡東医療センター 勤務
- 白十字病院 勤務
- 平尾病院 勤務
所属学会
- 日本頭痛学会
- 日本脳神経外科学会
- 日本脳卒中学会
- 日本リハビリテーション医学会
- 日本認知症学会